Introduction
建築学科を卒業した仲良し3人組の、
久しぶりの同窓会。
それぞれの道へ進んだ彼女たちが、卒業後のライフスタイルや学生時代の思い出など、
建築系女子の本音を語り合います。
Members
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坂田典子
主な仕事は住宅設計だが、現在は福祉施設の設計も担当。そのほか営業・工務までなんでも幅広く手がける。2018年に関西を襲った台風の後は住宅修理にも勤しんだ。
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垣内美咲
建築設計のほか、企業と共同でプロダクト開発なども行っている。最近では、住宅のプロダクト事業の一員として奮闘中。一級建築士資格を取得している。
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藤井麻実
小中学校の耐震工事を4年間担当。現在は市営住宅の維持管理や、民間の長期優良住宅の審査、サービス付き高齢者向け住宅の登録業務などを行う部署で日々奮闘中。
学生時代を振り返って、どうでしたか?
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垣内
在学当時は、今よりも女子の割合が少なかったのですが、毎日がすごく楽しかった。みんなものごとに対する熱量が高くて、オープンキャンパスのスタッフをしたときも、企画を立てたり、打ち合わせを重ねたりと、積極的に動いていました。
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坂田
オープンキャンパスで、水上バスに乗って天満橋周辺をめぐる企画を立てたのが思い出深いです!
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垣内
懐かしいな!大阪のまちを知ってもらうために、水陸両用バスで市内をめぐって、桜ノ宮から川を下って八軒屋浜まで。1億円もするめっちゃ大きなバスでした(笑)。
授業のなかで覚えていること、この技術を身につけた!と言えることを教えてださい。
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藤井
学んだ!と言えるのは、プレゼンと〝頑張る姿勢〞ですね。
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垣内
たしかに。特に意匠設計の授業では、粘り強く頑張りました。いろんな先生や先輩が参加する講評会があり、そこではプレゼン・講評のセットを何時間もしたね。
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藤井
何度つくり直しても「あかん!」と言われて、みんなで徹夜して課題に取り組むこともざらでした。つらくて泣いたことも……。
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坂田
香川県・直島の建築をめぐる合宿でも、先生との建築議論に火がついて、最後には泣きました(笑)。学生も先生も距離が近くて、いろんなことを言い合える。だから、本当に楽しかったです。
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垣内
おかげで、メンタルは強くなりましたね。好きだった授業は、意匠計画の授業です。建築だけではなく幅広いデザインの概念を学びました。最終日には、先生が「プレゼン方法だけではなく、仕事をする上でのスケジュール管理も教えたんやで」とおっしゃって。限りある時間のなかで、自分の100%の力を出す方法も学んでいたんですよね。
自分で決めた今の進路
働いてみて、思うことは?
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藤井
在学時は自分が公務員として働くなんて想像もしていませんでしたが、先生方がそういう道もあると教えてくれて。結婚してもバリバリ働きたいという意識はなかったのですが、公務員なら福利厚生がしっかりしているし、子どもを産んだ後も復帰しやすいということもあって、この進路を選びました。実際、育児休暇も職場復帰も当たり前という雰囲気を職場に感じています。私も子どもを産んで職場復帰しましたが、時短などいろんな制度を利用できて働きやすいですね。
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坂田
私は主に住宅設計を手がけていますが、忙しいときは仕事中心の生活に(笑)。休みは多くはないけれど、会社の人と食事したり、家族ぐるみで仲が良く、一緒に旅行に行ったりして楽しんでいます。就職活動をしていた当時は、なかなかピンとくる求人情報がなかったのですが、ネットで今の職場を見つけて。思い切って連絡したのが縁でした。実は、そのときは新卒の募集はしていなかったそうで、それでも「来てほしい」と声をかけてくださったみたいで。改めて、嬉しいですね。
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垣内
OCTは住宅設計を手がけている先生が多いので、住宅メーカーへの就職を考える学生も多かったと思います。私も最初は住宅を扱うビルダーに就職し、営業設計をしていました。その経験で養えたのが、潜在的ニーズへの提案や、予算管理などのバランス感覚。転職した今、分野を横断してさまざまな仕事に取り組めているのは、これまでの経験のおかげです。
働きはじめると、話で聞いていたことと
現実とのギャップも見えてくると思いますが、それぞれどうでしたか?
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垣内
そうですね。ハウスメーカーなどは専門部署ごとに担当業務が決まっていますが、ビルダーの場合はそれがなかなか難しい。私も営業設計のほかに広報も担当していました。仕事の幅が広くて、最初は作業時間の感覚が身についていないので、何をどうしたらいいかわからなくて。結構苦しかったですね……。当時は、よく3人で集まって励まし合っていました。
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坂田
そうそう! 夜中に励ましのメールを送り合ったり(笑)。
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藤井
私の場合は、1年目より2年目がきつかった。1年目は先輩や上司についていけば良かったけれど、2年目からは独り立ち。1年間でどれだけ仕事をものにしたのかを試されたなぁ。また、入庁してから4年間、小中学校の耐震工事に携わっていたのですが、リミットがあり、仕事量が半端じゃなくて。発注先の設計事務所の図面チェックや工事の建設会社を選定するなど、計画と管理、双方の仕事をしていました。現場に行けば男性たちと対等に渡り歩かなきゃいけないし。
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坂田
お施主さんと話しながら住宅をつくっていくことに興味があって、今の会社を選びましたが、新卒の頃は、関わる人がほぼ目上の方だったので、自分がどう見られているのかを気にし過ぎて自信がもてませんでした。まずは「とにかく勉強するしかない!」と必死でしたね。
今できること、やりたいこと。そして、今後の見通しは?
座談会を覗きに来てくれた建築設計学科の吉田先生にも
少しコメントをいただきましょうか。
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吉田
3人は学生時代もパワフルでしたね。「OCTの3人娘」と呼ばれるくらい(笑)。僕は今、学生時代に学んだ設計とは違う分野で仕事をしているけれど、若い頃から自立して何でもできるようになりたいという想いは変わらずもっていました。3人は社会に出た今、どんな目標をもっていますか?
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垣内
私は、設計だけにこだわってはいないです。建築が人生の目的ではなくて、それは手段や過程みたいなものだから。これからの目標は、どんなかたちになっても頑張って働くこと、楽しい人生にすることですね。
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坂田
私は今の仕事に就いて、やりたいことが一度叶いました。だから、今はこれからの目標を模索している感じ。素敵なパートナーにも出会いたいですね(笑)。
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藤井
そうやな。
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坂田
住宅建築のお施主さんには、お子さんのいる家族が多いので、やっぱり家庭をもっている設計士のほうが説得力もあると思う。
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垣内
私も仕事中、家庭ももってないのに「なんで人の生活を語ってんねん!」と思うことも(笑)。
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藤井
先のことはわかりませんが、学生時代の自分には「今やっていることは無駄ではない」と言えるかな。
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垣内
一生懸命ひとつのことに取り組める時間って学生時代しかない。仕事としてものをつくると、時間や予算の兼ね合いでやりたいことを実現できないことも多々ある。もちろん一生懸命に向き合った記憶ばかりで後悔はないけれど。だから、学生には、課題のなかでつくりたいものを爆発させてほしい。
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坂田
そうそう。やりたいと思ったことは、今やっとかないと!(笑)。