自身の建築設計事務所で建築設計活動を行う傍ら、OCTの建築学科2部で主担当教員として教鞭をとる岸上先生。今回、岸上先生の新しい住宅作品が平成22年日本建築士会連合会賞に入選し、奨励賞を受賞されました。
▼設計者: 岸上勝彦 【岸上勝彦+明建築工作舎 代表】
▼戸建住宅: 「ARK」 和歌山県和歌山市鳴神
▼▼▼選評(KENCHIKUSHI.2010.10より)
和歌山市郊外に建つ、比較的大規模な住宅である。
外部から見ると、単純な閉じたコンクリートの箱のように見えるが、じつはこの建築はRC造と鉄骨造との混構造である、外部の変化しつつある都市郊外の予測不能の変化に対しては閉じたコンクリートの壁の表情が対応すると同時に、一転して内部空間では鉄骨造の細かなスケール感が人間のスケールに対応した繊細な内部空間をつくりあげている。
この住宅は3世代5人の家族が暮らすためのものであるが、平面を見てもそれぞれの個室はほとんど等価に扱われており、多世代対応の特殊な平面的な配慮の存在を感じさせない。されにこの建築は2階建てではあるものの基本的には平屋の建築であり、2階の空間はフラットルーフの建築の、ほとんど屋根裏の空間として扱われている。
そうした平面やだんめんの計画は、少し前まではわれわれの周辺に普通に存在していた、大家族が一緒に住む、大きな「田舎家」を思い出させるような、おおからな住宅の再現を建築家は考えているのではないだろうか。住宅といえば核家族対応でnB+LDKのバリエーション、と単純に捉えることができた時代が遠くに去って久しい。そんな現在、この建築家の行った「田舎家」の現代的な見直しという方法はとても意味のある仕事だど考え、高く評価したい。
Article prepared and uploaded by J.Kohama