建築学科Ⅱ部卒業、現在OCTで非常勤講師を勤めています木村貞基先生が、
第40回大阪都市景観建築賞で「大阪府知事賞」を受賞されました!
大阪府知事賞「箕面滝道 橋本亭」
以下、木村先生よりコメントです。
第40回大阪都市景観建築賞において、設計監理をした「箕面滝道 橋本亭」が大阪府知事賞を受賞することになりました。あらためて身の引き締まる思いです。
この受賞で、誠に微力ながら、都市景観と建築、まちづくりを考える新たな視点の一つになれば、と小さく願うところです。
アルファ建築設計事務所 木村貞基
大阪工業技術専門学校 校友会常任理事(平成9年 建築学科Ⅱ部卒業)、非常勤講師
※コロナ前の木村先生による授業風景です※
この景観建築賞は大阪府で周辺景観の向上に資し、かつ景観上優れた建物や建物を中心としたまちなみを表彰する愛称 (大阪まちなみ賞)です。
本年度は、令和3年7月1日から7月31日までの1か月間、広く一般から推薦を募集したところ、117件に及ぶ推薦がありました。
これらの建物を中心としたまちなみについて、建築、都市計画、造園、デザイン、報道等の各分野の専門家8名で構成されている審査委員会(審査委員長:近畿大学総合社会学部総合社会学科環境・まちづくり系専攻教授 久隆浩)で審査した上で、
「大阪府知事賞」、「大阪市長賞」、「審査員特別賞」、「緑化賞」、「建築サイン・アート賞」、「奨励賞」(5作品)を決定しました。
「箕面滝道 橋本亭」とは
明治43年(1910年)箕面滝道の一の橋のたもとに築造された旧・橋本亭(旅館)は、明治情緒溢れるたたずまいで滝道の賑わいの中心として親しまれてきました。
しかし、平成28年(2016年)に発生した自然災害(崖崩れ)により、巨大な岩が建物背面を直撃し、建物は全面撤去。旧・橋本亭は100年以上にわたって多くの人々に親しまれ、市条例に基づく都市景観形成建築物として箕面公園の歴史を見守ってきた大切な観光拠点であることや市民からも再築を望む声が多かったことから、旧・橋本亭の復元を計画しました。
現在の法令上、建物規模や構造的な制限により完全復元は困難なことから、解体撤去時に保存された部材を一部再利用し、旧・橋本亭の外観デザインを踏襲しつつも、新たに箕面川に面したオープンスペースを設け、箕面の自然と調和できる開放的な交流空間を計画するなど、新たな要素を加えて明治情緒あふれる外観を再定義・再構築。その後令和3年に、新生・橋本亭は、景観法に基づく景観重要建造物に指定されています。
阪急箕面駅から箕面大滝にむかい5分ほど歩いたところにある橋本亭。ここは83.8haを誇る「明治の森箕面国定公園(国定公園)」の入口にあたり、豊かな森林と清流に囲まれた場所であり、如何に緑を取り入れるかではなく、如何に豊かな自然景観の中に、違和感なく溶け込むことができるかに注力を注ぎました。
建物は、周囲の森林を邪魔することなく、新たに計画した川べりのデッキも腰壁など視線を阻害する要素を排除することで、かつて、緑に溶け込んでいた旧・橋本亭が、今も変わらぬ佇まいでそこにあると感じられるよう配慮しています。
また、周囲の森林とともに時を重ね馴染み、かつて旧・橋本亭に住み着いていたヤモリが再び居を構えてくれることを願い、敢えて木造建築を採用し、できるかぎり旧・橋本亭の部材の再利用を目指しました。特に、独特の歪みある貴重なレトロガラスの再利用に成功し、旧・橋下亭で最も特徴的であった対岸からの「一面のガラス格子建具群」の景観、いわば木製カーテンウォールを蘇らせることができました。このほか、「橋本亭」の金物サインや、結霜ガラス、吊り灯籠のほか、多くの木製建具を再生し、建物の命と情景を引き継ぐことも実現できました。